2011年7月20日水曜日

青森印象派展、開幕!

[三浦篤]

7月8日のお昼に青森空港に降り立つと、急ぎタクシーで青森県立美術館に向かう。気鋭の建築家青木淳さんが設計したユニークな建物が目の前に現れたが、まず入口がどこか分かりにくい。中に入っても、空間が入り組んでいて、迷子になりそうだった。でも、地下の展示空間は圧倒的な存在感があり、その一角に「光を描く印象派展」が設えられていた。


震災の危機を乗り越えて実現した展覧会で、三村知事、高山館長、朝日新聞社以下、多数の関係者にとって感激もひとしおであることが、式典、パーティーなどを通じて痛いほど感じられた。私も日本側の監修者として、カタログ制作などお手伝いし、院生たちも協力してくれたが、その苦労話は敢えて記さない。無事にオープニングを迎えて、本当に良かったと思う。青森初の印象派展なのだから。


青森県美のスタッフが力を尽くした展示は良くできていて、これは一見の価値がある。印象派絵画に関して、科学的調査の成果をここまで総合的に見せてくれる展覧会は、日本では今まで行われなかった(朝日新聞7月6日朝刊、『サライ』7月号で見どころを解説)。本展の基になった展覧会がケルンのヴァルラフ=リヒャルツ美術館で2008年に行われており、作品の科学的調査の結果がインターネットで公開されているので、興味のある方はどうぞ。私個人はマネの描くアスパラガスが見られて感動。8月14日(日)に講演会を頼まれているので、再び青森行きです。





2011年7月18日月曜日

エコール・ド・プランタン余録

[三浦篤]

少し前のことになるが、5月16日から21日まで、フランクフルトでエコール・ド・プランタン(春のアカデミー)に参加した。欧米主要大学の美術史系教授連のフレンドリーな関係に基づいてセレクトされた大学院生を、毎年1回1週間集めて発表させるこのユニークな催しについては、かつて別のブログで紹介したことがある。昨年のフィレンツェ大会には私が日本から初めてゲスト参加したが、今年は発表する若手研究者2名をフランクフルトに引き連れて行ったことも報告している。



フランクフルト大学で行われた今回の大会は、発表もさることながら(むろん発表者によってレベルの差があったのは確かだが)、日を追う毎にヒートアップしていく質疑応答もなかなかのもので、高速の議論についていくのは正直大変だった。英仏独伊語が公用語で、ほとんどの学生は自分の母国語で発表し、外国語でも質問を受けることになるのだが、次第に英語中心になっていくのは最近の情勢から致し方なかったか。ただし、日本人学生はここでは必然的に外国語での発表と質疑応答になるから、最初から二重のハンディキャップを負っているわけで、これは学問的に欧米圏に打って出るためには何とか乗り越えなければならない壁となる。今さら繰り返すまでもないことだが、最低、英語ともう一カ国語の運用能力をとにかく高めることが必須と言える。今からでも決して遅くはない。